Watch 2017/10/08 14:00

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移民がいたからこそ、現在のアメリカ音楽がある

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現在のアメリカ合衆国が移民によって作られたように、アメリカの音楽もまた多くの移民によって作られたものである。もちろんアメリカ大陸にも固有のネイティブ・アメリカンの音楽が存在していたが、世界各地の音楽に大きな影響を与えたのは、移民によって発展したアメリカン・ミュージックだった。生まれ育った土地を離れて、異国の文化と交わり、融合する過程で、アメリカの多様な音楽が生まれた。

ポップス、ロックンロール、ブルース、R&B、ゴスペル、ジャズ、カントリー&ウエスタンなどなど。もしもアメリカ大陸が発見されず、アメリカへの移民が存在しなかったならば、現在の世界の音楽地図はまったく違うものになっていただろう。

ここではアメリカ音楽がどのように作られていったのか、個人的な視点も交えて、その概略を紹介していこう。

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いつだって音楽はマイノリティーたちの味方なのだ

音楽は素晴らしい。おそらくこの意見に同意してくれる人はたくさんいるだろう。音楽の長所は数え切れないほどあるが、個人的に真っ先にあげたい美点はマイノリティーの側に立ってくれるということだ。差別、迫害、搾取される側の生きる支えとして、アメリカ音楽は発展していった。もっとも顕著な例はアフリカからの奴隷たちによって生まれたゴスペルやブルースだろう。彼らは拉致・拘束され、奴隷船の積み荷として運ばれてきたのだから、自らの意志で海を越えた移民とは事情が異なるが、困難と直面しながら、新世界で独自の音楽を発展させていったという点では共通している。

17世紀の前半から19世紀半ばにかけて、アフリカから奴隷として運ばれてきた人の数はのべ数千万人にのぼると推測されている。それらの人々は当然のことながら、アフリカの楽器も持たず、母国語も使えない状況の中で、遠く離れた故郷への思慕を胸に、様々な国の移民の支配下で、英語、スペイン語、フランス語など、他言語が混ざり合ったクレオール語による新しい音楽を生み出していった。読み書きもできない環境で、記録する手段もないのだから、実演によって伝承するのみ。

20世紀に入ると、綿摘みの労働歌とアフリカ独特のリズムや歌唱法にヨーロッパのバラッドが結びついて ブルースが生まれ、黒人専用の教会において、賛美歌にアフリカの歌唱法が混ざって、ゴスペルが生まれた。過酷な労働の日々の中で、悲しみや苦しみを軽減したり、鬱屈を発散したり、自由を希求したり。現代の音楽の持っている機能はすでにアメリカン・ルーツミュージックに色濃く備わっていたのだ。

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カントリーにはサバイブするたくましさが宿っている

恥ずかしながら、カントリー・ミュージックの奥の深さ、懐の深さに気付いたのは、ここ10年くらいのことだった。それまではひとまとめにして、「アメリカ讃歌」的な自然志向の強い音楽という印象を持っていたのだが、実は多種多彩で豊穣な音楽だった。ヨーロッパの様々な国からやってきて、アメリカ全土に根を下ろし、出身地の音楽への愛を持ちながら、それぞれの風土で独自の音楽を発展させていったのだから、個々の歴史的背景を考えれば、「違って当然」ということになる。

例えば、カナダに移住したフランス系移民がイギリス系移民に迫害されて、さらにルイジアナ州へと移住して生まれたのがケイジャンである。当時、ルイジアナ州はフランス領からスペイン領へと変更された直後だったが、フランス系移民はこの新天地でも迫害されながら、サバイバルしていく。その過酷な日々がケイジャンという激しい肉体的なダンス、ダンス・ミュージックへと昇華されていったわけだ。

アパラチア山脈近辺に移住したイギリス系移民、アイルランド系移民によって発展したのはマウンテン・ミュージック。限られたスペースでは紹介しきれないが、ヨーロッパ各地の民族音楽が重層的に混ざり合い、東欧系移民が持ち込んだフィドルを始め、様々な楽器が組み合わされ、様々な演奏方法や唱法が影響を及ぼしあい、カントリーは風土や移民の構成比などによって、多様な発展を遂げていく。それらに共通点があるとするならば移民のDNAということになるだろう。大西洋を越えて、未知の大陸に移住するには相当の覚悟が必要だ。希望に燃えてというよりも、故郷を追われたり、生活に困ってやむにやまれず、というケースが多かったに違いない。だが、移住先でも過酷な現実が待ち構えていた。優れたカントリー・ミュージックに生命力が凝縮されているのは、困難を乗り越えて、奏で続けた音が詰まっているからだろう。

枝分かれした音楽のその先にあるものは?

20世紀に入って、ラジオ、レコードの普及に伴って、アメリカ本土でポピュラー音楽が誕生し、ヨーロッパ、アフリカ、中米、南米、様々な土地にルーツを持つ音楽はさらに融合を繰り返して、どんどん細分化されていった。例えば、ヒップホップは抗争が日常化していたニューヨークのブロンクスのストリートで、アフロ・アメリカン、カリビアン・アメリカン、ヒスパニックの文化が混ざり合って誕生した。ハウスはシカゴにおいて、ディスコやフィリー・ソウルが融合し、ドラム・マシンと化学変化を起こしたことが起源となった。音楽は現在も刻一刻と変化し、細分化している。音楽の発展の歴史を樹木に例えるならば、大きな幹が枝分かれしていくのにも似ている。根から幹へ。幹から枝へ。発展していけば行くほど、もともとのルーツのDNAは薄くなっていく。だが、そうした流れの逆を行って、ルーツへ回帰する動きもある。

昨年、発表されたビヨンセのアルバム『レモネード』は回帰と進化が両立する傑作となった。アフリカという自分の根源的なルーツを見据えながら、あらゆるジャンルをミックスした最先端の音楽を作っていて、アルバムラストの『Formation』では自分のルーツに言及し、アフロ・アメリカンの尊厳を音楽によって示している。グラミー賞最優秀アルバム賞を取ったアデルはスピーチで、この賞はビヨンセこそがふさわしいと、敬愛の念をこめて涙を流しながら語ったのは今も記憶に新しい。

音楽のルーツを遡ることは人間の歴史と対峙することであり、人間の本質を探求することにもつながっていく。『ヒューマン・ジャーニー アメリカ合衆国のつくりかた』を見て、移民の歴史に興味を持った人がいたら、そこを入り口として、新たな視点で音楽と接することで、リスニング・ライフはより豊かなものになるだろう。

以下、参考文献にして、お勧め本をいくつか列挙しておこう。

『アメリカン・ミュージック再発見』中村とうよう(北沢図書出版)

『大衆音楽の真実』中村とうよう(ミュージックマガジン)

『ジャズの歴史』相倉久人(新潮新書)

『ニグロ・スピリチュアル』北村祟郎(みすず書房)

『ニグロ、ダンス、抵抗』ガブリエル・アンチオープ(人文書院)

Writer:長谷川誠

スカパー!番組放送情報

【日本初放送】 [二]ヒューマン・ジャーニー アメリカ合衆国のつくりかた Part 1

放送日時 2017年10月15日(日) 13:00~15:00
チャンネル ヒストリーチャンネル 日本・世界の歴史&エンタメ(CS342/プレミアムサービス674)

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※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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